■著者 磯田道史(みちふみ)
■発行所 株式会社 新潮社
■価格 680円(税別)
■ひとことでいうと 江戸時代の武士の家計簿から読み解く当時のお金の使い方が分かる本
著者の磯田道史(みちふみ)氏が古本屋で入手した古文書は、江戸時代の加賀藩(かがはん:石川県と周辺)に仕えた武士・猪山家の家計簿だった。猪山家はとある事情で家計簿を付けることになるのですが、当時の武士たちは何にお金を使っていたのか?という疑問が分かる本です。
武士が一番お金を使っていたのは
この家計簿から当時の武士の歳出が一番多いのは身分費用でした。身分費用とはわかりやすくいうと、武士身分として格式を保つために支出を強いられる費用のこと。親戚付き合いから1年通しての様々な行事、また風習などにとにかくお金がかかる武士。また猪山家は江戸詰めといって、江戸に勤務していた時期があり、この江戸詰めでも給料以上の出費がありました。
現代の私達も冠婚葬祭や会社の行事、また親戚付き合いなど、周辺との関係を良好に保つための出費がありますが、江戸時代はもっと多く大変な時代だったのです。
なぜ妻と夫の財布が別なのか
江戸時代の結婚生活は長くありませんでした。理由は以下の通り
・寿命が短く「死別」がよくある
・離婚率も多かった
離婚しても男は仕事から収入を得ることができるので、経済的には困りません。でも女の場合は実家に戻るかすぐ再婚しないと生活できない、だから財布は別管理がほとんどだったそう。
子供を産む場所が違う
加賀藩の場合、最初の子どもは実家で産み、それからは嫁ぎ先で産むというのが一般的。これは考えるまでもなく、実家のほうが実親もいるわけだし何かと安心だから。一度嫁いだら死ぬまでその家の女…というわけではないのです。
私の感想
一人の武士のプライベートな家計簿から、江戸時代の武士のお金の使い方、行き方が分かる本です。経済というキリクチから武士を知る視点が面白かった。磯田先生の文章は読みやすく、小説を読むようにグイグイ読めます。
武士の家計簿は映画化されています。堺雅人さんや仲間由紀恵さんが出演されており、著書をもとに作られているので合わせて見るともっと楽しむことができます。